見えないところで「燃焼」するトークン
月末のクレジットカード明細を見て、思わず二度見した経験はないだろうか。最近、現場のエンジニアたちと話していると、必ずと言っていいほど話題に上るのが「AIエディタの裏側で発生しているコスト」だ。
Cursorでコードベース全体を横断検索し、ターミナルではClaude Codeを走らせ、時にはGitHub Copilotも併用する。息をするようにAIにコードを書かせ、エラーが出れば雑に「直して」とリトライを指示する。それは確かに快適な開発体験だが、水面下ではコンテキストウィンドウに詰め込まれた膨大な履歴が毎回送信され、凄まじい速度でトークンが消費されている。我々は生産性を手に入れた代償として、自分がいま「いくら分の計算資源を燃やしたのか」を直感的に把握できなくなってしまった。
こうしたAIコーディング時代の新しい盲点に対して、非常にハッカーライクなアプローチで光を当てたツールがある。「CodeBurn」だ。
プロキシ不要、ローカルログからの直接抽出
CodeBurnは、開発者がAIコーディングで消費したトークンとコストを可視化するTUI(Terminal UI)ダッシュボードだ。既存にもコスト管理ツールはいくつか存在したが、それらの多くは独自のプロキシサーバーを経由させるか、エディタに重い拡張機能を入れ込む必要があった。
しかしCodeBurnの設計はもっとシンプルで直接的だ。Claude CodeやCursor、Codex、さらにはPiやGitHub Copilotといったツール群が、ローカルのディスクにひっそりと残しているセッションデータ(SQLiteやJSONファイル)を直接読みに行くのである。外部にAPIキーを預ける必要も、面倒なセットアップもいらない。Node.js環境さえあれば、今すぐターミナルで実行できる。
# インストール不要で即座にダッシュボードを起動
npx codeburn
コマンドを叩くと、ターミナル上にグラデーションカラーの美しいダッシュボードが描画される。今日、直近7日間、今月といった期間ごとに、どのモデルが、どのプロジェクトで、どれだけのコストを消費したのかが一目瞭然になる。
AIとの「協業スキル」を測る計器盤
ただコストを集計するだけなら、少し気の利いたスクリプトでも事足りる。私がこのツールを真に優れていると感じたのは、「ワンショット成功率(one-shot success rate)」のトラッキング機能だ。
これは、AIが一発で期待通りのコードを生成できた割合を示す指標である。AIが文脈を読み違え、テストと修正の無限ループに陥ってトークンを浪費(burn)したタスクを特定できるのだ。
# 直近7日間のログから無駄の多かったセッションを特定する
npx codeburn optimize -p week
このデータは、開発者に重要な示唆を与えてくれる。トークン消費が激しいのは、モデルの性能不足なのか、それとも自分のプロンプト(指示の出し方)が曖昧だったからなのか。あるいは、特定のMCPサーバー(Model Context Protocol)の呼び出しでエラーが頻発しているのではないか。CodeBurnは単なるコスト監視ツールを超えて、開発者自身の「AIへのディレクション能力」を定量的にフィードバックしてくれる鏡になる。
JSONフォーマットでの出力(codeburn report --format json)もサポートしているため、jqコマンドと組み合わせて特定のプロジェクトの消費量だけを抽出したり、社内のメトリクス基盤にデータを流し込んだりする拡張性の高さもエンジニア心理をよくわかっている。
魔法の杖から、計算資源へ
生成AIは決して魔法の杖ではなく、コストを伴う従量課金のリソースだ。そのリソースをいかに無駄なく、賢く使いこなすか。手元のターミナルで燃え盛るトークンの量を知ることは、AIに踊らされるのではなく、AIを正しく乗りこなすための第一歩になるはずだ。
参考リポジトリ: AgentSeal/codeburn
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